NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレチド)はすべての生物種に存在する補酵素で主に酸化還元反応で中心的な役割を果たしている。近年、NAD+合成系においてNAMPT(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ:nicotinamide phosphoribosyitransderase)が周囲の栄養状態に反応してNAD+量を調節することで炎症・細胞分化・老化などに重要な役割を果たすことが明らかになってきました。さらに、糖尿病やがん、アルツハイマー病のような老化関連疾患でNAMPTの最終生成物であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレチド:nicotinamide mononucleotide)やNR(ニコチンアミドリポシド:sicotinamide riboside)などの中間代謝産物がNAD+量を増加させ、病態を改善することが報告されている。
NAD+合成経路
NAD+はトリプトファン、水溶性ビタミンB3として知られるニコチン酸アミドとニコチン酸、およびNRなどから作られる。そして作られたNAD+はDNA損傷が起きると利用され、ミトコンドリア機能活性促進、体内のエネルギー消費量の増進などによって耐糖機能の改善、体脂肪量の低下などをもたらすことが知られている。
また、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させ、脳内の神経活動性を高め、寿命延長効果をもたらすという研究結果も報告された。
こうしたことから、NRやNMNが生体内のNAD+量を増加させ、眠っていたサーチュイン遺伝子を活性化させることで若返り効果が期待されている。
参考文献 Journal of Japanese Biochemical Society 87(2):239-244(2015) ワシントン大学医学部 山口慎太郎、吉野純